大石方言メモ

kawagutiko2013-01-01

河口湖北岸大石地域には独特な方言があります。
私は大石生まれですが、住居が大石地区から離れていて、幼少期から地元の交流が薄く、あまり大石方言をちゃんとマスターしていませんが、少しこの地域の言葉をメモしておこうと思います。

大石の単語

「うら」…一人称「私」の意。
「われ」…二人称「あなた」の意。
「うらら」…一人称複数形「私たち」の意。
「うらんち」…私の家、の意。
「われんち」…あなたの家、の意。
「おやこ」…親戚のこと。発音は「や」が下がる。
「ずるい」…無精なこと。狡猾という意味はない。間抜けで愚かしいニュアンスはある。
「ずるへえ」…名詞。無精な様子。無精な人。どちらかというと、服装の一部が崩れている、他は整然としているのに部分的に雑然としている、など、局所的なことを指すニュアンスがある。
「よどうされ」…名詞。無精な様子。無精な人。身体全部を意味するニュアンス。
「あくでえ」…副詞。「非常に」「たいへんに」という意味。悪辣という意味はない。どちらかというと否定的に用いるほうが多いが、肯定的にも用いる。例;「あくでえ稼ぎ者(もん)で」…非常に稼いだ人だ、非常に働き者だ、の意。例;「あくでええらくって」…たいへんに利口で、の意。
「えらい」…形容詞。「利口である」の意。尊敬に値する、という意味はない。「えりゃあ」ともいう。
「ごっちょ」…形容動詞。「疲れた」の意。転じて「面倒くさくて疲れる」の意。「しんどい」のニュアンス。
「かがびっちょ」…名詞。サイズの小さなトカゲ。イモリやヤモリとはまた違うらしい。
「ずら」…終助詞。あるいは同意を求める助動詞。「だね」に相当する。俗説では武田信玄がスパイを見分ける暗号として断定の助動詞「だ」の代わりに否定の助動詞「ず」を領民に用いさせたのが起源とも。
「にゃあ」…否定の形容詞「ない」、否定の助動詞「ない」。大石弁は「にゃあにゃあ」言うので、「大石の者は猫を食っているから『にゃあにゃあ』言っている」という冗談がある。猫を食べる風習はありません。
「しゃらっさびい」…「たいへんに寒い」の意。「しゃら」は悪い印象の形容詞・形容動詞を強調する。この「しゃら」はたぶん「しゃらくさい」の「しゃら」で、強調の接頭語として用いる。大石には「しゃらくさい」という言葉はない。
「しゃらごっちょ」…「たいへんに疲れる」「たいへんに面倒くさくて嫌である」の意。
「ずじゃあ」…「大いに」の意。これは否定のニュアンスがない。肯定のニュアンスがある。例;ずじゃあ遠い
「うんみゃあ」…旨い、美味しい、の意。
「ほっかやん?」…そうですか、の意。「ほう」は標準語「そう」に相当する。
「ほっか」…そうですか、の意。
「やん?」…疑問を意味する。ふつうは「ほっかやん?」のように文末に用いるが、単独で「何?」を意味するのにも使う。発音は尻上がり。
「ほっかえ?」…そうですか、の意。どちらかというと女性言葉。
「ほうどう」…そうです、の意。そうですね、だと「ほうどうわ」になる。
「だらぶね」…昔の下水、汚水溜め、あるいは肥溜めのこと。臭いものへの形容語として現在も時々使用する。
「ばばっちい」…汚い、の意。
「しじ」…男性器のこと。だから大石では「先生の指示に従いましょう」と小学校で教師が言うと、生徒が爆笑した。
「べべ」…女性器のこと。あるいは性交のこと。だから大石では「紅いべべ着たお人形は♪」の歌を小学校で歌わそうとすると、生徒が爆笑した。
「べべっこ」…性交のこと。

大石の文法・発音・音便

大石方言は、標準語とは以下の発音・文法の違いがあります。
1;「ざ・ぜ・ぞ」の発音が消失し、「だ・で・ど」になる。
例;「象さん」を「どうさん」と呼ぶ。雨は「ざあざあ」降るのではなく、「だあだあ」降る。
だいたい60歳より前の世代にこの傾向が強く、それ以降の世代では徐々にこの傾向は消失する。40歳くらいまではこの傾向は残っている。
ウチの屋号「戸沢(とざわ)」は地名に由来しますが、地元では「とだあ」もしくは「とさあ」と呼びます。
2;助詞「は」「が」「の」は、省略されるか、「ん」で代用される。
例;「うらん鉄砲持ってっとお」…「私が鉄砲を持っていった」の意。
例;「われんなにょおゆうどお」…「お前が何を言うのだ」の意。
例;「われんちんおかあん、はたらいてとおわ」…「お前の家の女房(もしくは母親)がはたらいていたよ」の意。
3;助詞「に」は「ん」という。
例;「好きんなっとおもん同士」…「好きになった者同士」の意。
4;「の」はしばしば「ん」に変化している。
例;「あくでえもんどお」…あくどいものだ、つまり「たいへんなことだ」の意。
5;独特の終助詞
「ずら」…「だね」に相当する。
「とお」…動詞の終止形「る」、あるいは「たよ」に相当する。例;「つっぱしっとお」…「(全力で)走りました」の意。
「にゃあ」…「ない」に相当する。
「らあ」…動詞の終止形「る」に相当する。
「どお」…断定の助動詞「だ」、あるいは念を押す「だぞ」に相当する。「だど」も用いる。
6;動詞の言い切り、あるいは勧誘の動詞は「ず」で終わる。
「行かず」…行きましょう。
「食わず」…食べましょう。
「寝ず」…寝ましょう。

大石方言例文

冒頭の文章を大石方言に訳すとこんな感じになります。
大石にゃあ、ここだけん言葉ん、あらあ。
うらん、大石生まれどおけんど、すんでっとこん、村中ん離れてとおもんで、がきんちょんころんから、大石もんとん、つきあいんにゃあんで、大石ん言葉、巧く言えにゃあけんど、ちっと、大石ん言葉あ、書いとかず。
http://d.hatena.ne.jp/kawagutiko/20130103/1357201108 へ続く。

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